覆水盆に返らず

 昔々あるところに、覆水と呼ばれるそれは親孝行な若者が――
「もうやめね? オチが読めた」
「まあ聞け。言っとくが盆に帰省しなかったってオチじゃあないぞ?」
「マジで?」
 覆水は盆にはちゃんと帰った。
 さっそく覆水は腰の悪い親御のため、焚き木を拾いに山へ出かけた。
 すると覆水は崖から落ちて生命活動を停止…死んだのだ。
「覆水死んじゃうの? そんなあっさり」
「人とはかくも儚い生き物よ…昨夜の大雨で地盤が緩んでたのだ。すなわち覆水は盆に帰らぬ人に」
「俺は帰省しないオチの方が好きだな…」
(暗転)